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3月7日(月)12時0分 ITmedia PC USER
新たに手にしたデル・テクノロジーズのノートPC「Inspiron 14(5410)」
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物書きという仕事をしている以上、家だけでなく取材先で原稿を書くことがあるのは当然のことだ。2021年は、とあるショップの新規店舗オープンが日本各地で相次いだこともあり、取材が終わったらカフェなどに入って原稿を書くことも多かった。 しかしそこで勃発した問題が、筆者が使っているモバイル用のPCだ。これまで使っていたのは2017年に購入した、NECパーソナルコンピュータの13.3型モバイルPC「LAVIE Z(PC-HZ550GAB)」だ。第7世代のCore i5-7200Uを搭載した買った当時の最新PCであり、重量も約831gと軽く、どこに持ち運ぶのも気にならない。●Windows 11の登場で仕事用PCの買い換えを決断 でも価格を優先 しかし使っていくうちにいろいろな問題が目に付いてくる。致命的なのはメモリ搭載量で、4GBと今となっては非常に少ない。買ったときはそれほど気にならなかったのだが、画像の加工にPhotoshopが必要だからと無謀にも入れてみたものの、その後の展開はご想像の通りだ。 起動や作業に時間がかかっても、まあいいかと使っていた。しかし、OSが重くなっていったのかは分からないが、年を経るごとに、全体的に挙動がもっさりとしてくる。揚げ句の果てにはOSの起動自体にも時間がかかるようになってしまった。しかし、新しいPCはなかなか買うこともできず、なだめすかして使ってきた。購入時は18万円もしたのに……。 そして引導を渡されたのがWindows 11の登場だ。これもまたお察しの通り、第7世代はアップグレードの対象外になっており、とどめを刺された格好だ。少々腹立たしいところではあるが、こうなったのならきちんと動作するPCを手にしてやろうじゃないか。 では、どのようなスペックであれば満足できるのか。自分なりに譲れないスペックを洗い出してみた。それは以下の通りだ。新モデルに求める主なスペック・液晶ディスプレイのサイズは14型以下・Windows 11プリインストール・CPUはCore i7以上・メモリは16GB以上・GPUはIris Xe Graphics以上・ストレージは1TB以上・Thunderbolt 4対応・価格は安ければ安いほどいい 見て分かるように、自分で言うのも何だが、かなりわがままな条件だ。これらを全て満たすことができるPCはあるのだろうか。いや、あるにはあるのだ。お金を出せば。しかし筆者が家庭内財務大臣から許されたのは10万円少々と心もとなく、極めて厳しいものだ。 国内メーカーだけでなく、海外メーカーも含めてリサーチしたが、なかなか条件に合うものがない。そんな中で見つけたのが、デル・テクノロジーズの「Inspiron 14」だった。 Inspironシリーズは、13型だと12万程度に価格が上昇(購入当時)してしまうので対象外となるが、14型だと上の条件に合うモデルがありそうだ。同社のWebサイトでポチポチしながら探してみると、Inspiron 14の「5410」であれば、上記の関門はクリアできそうである。 5410の中でも即納モデルは10万5852円(税込み、2022年1月購入時の価格)と安かった。ただし本体色は「プラチナシルバー」の一択となる。もう1つの色の「ピーチダスト」でもいいかと思ったが選べない。まあいいだろう。君に決めた。●ちょっと重いけど背に腹はかえられない さて、何でこれだけ安いかというと、2021年4月に発売されたモデルだからだ。つまり、そろそろ第12世代への移行も見えてきているし、おそらくそれまでには在庫は減らしておきたいところなのだろう。このため、標準価格である14万7270円からかなりのお値引きとなっていた。 実はここが狙い目なのだ。同じように考えている人は多いらしく、筆者が購入した時点ではいろいろな選択肢があったのだが、本稿を執筆している2月段階ではかなりBTOの範囲が狭まっている。早く選ぶのが無難だろう。 ところで筆者が購入した5410のスペックは下記の通りだ。 パッと見でも仕事で使う分には遜色がなく、Photoshopなどのグラフィックス系アプリでも十分に対応できそうな気がする。しかし妥協した点もある。まず1つは本体の重量だ。前のPCが900gを切っていたのに対してこちらは約1.5kgもある。600gの差は大きく、いつも持って出歩いているリュックに入れると、持ち上げるときにかなりの重さを感じた。しかしまあこれは、背負ってしまえば問題ない。 もう1つの問題はバッテリーだ。前に使っていたLAVIE Zは実駆動で8時間ほどバッテリーが持ったが、今回購入したCPUはCore i7だし、それ以上に電力を消費すると思われるこのPCではどの程度なのか。これは後ほどベンチマークテストで調べてみよう。●必要十分なポート類に打ちやすいキーボードを装備 プラチナシルバーの外観は、まさにビジネスPC然としているが、液晶ディスプレイ天面とキーボード面はアルミ素材が採用されており、かっちりとした仕上がりだ。 インタフェースは、ボディー左側面に電源アダプター端子とHDMI 1.4端子、USB 3.2 Gen 1 Type-A端子、Thunderbolt 4端子が並ぶ。右側面には3.5mmのヘッドフォン端子、USB 3.2 Gen 1 Type-A端子、microSDカードスロットが用意されている。 個人的に気になったのはmicroSDカードスロットだ。最近のPCではフルサイズのSDメモリーカードスロットではなく、microSDカードスロットを搭載するものが多いが、問題になるのがデジカメとのデータ連係だ。筆者が取材などで使う「EOS 7D Mark II」はSDメモリーカードを使用する。このためUSBポートに差して使うアダプターを利用しなければならないので少し面倒に感じた。 ただ、それ以外は全く不満はなく、左右両側面にUSB Type-A端子があるのもうれしいし、自宅ではボディーの左側面から電源を取ることになるので、電源アダプター端子とThunderbolt 4端子が左側にあるのも好ましい。●フルHD表示対応の14型ディスプレイを採用 14型の液晶ディスプレイはノングレア(非光沢)タイプで、フルHD表示(1920×1080ピクセル)に対応する。最近のトレンドではアスペクト比16:10の1920×1200ピクセルのモデルも多いが、5410はトラディショナルにフルHD対応だ。 なお、液晶ディスプレイを広げるとヒンジ部が下に回り込み、本体に実測で約2度の傾斜が付く。これによりキー入力がやりやすくなり、底面に空気の通り道ができて冷却面でも有利になる。液晶ディスプレイを開いた状態だと、本体奥にある排気口がディスプレイと接するようになっていて、そこからディスプレイに沿って上向きに排熱される仕組みとなっている。 ただし液晶ディスプレイは実測で約136度までしか開かず、対面でのプレゼンや資料共有の際に多少の不便さを覚える。 液晶ディスプレイ上部に720p(30fps)のHDカメラとデュアルアレイ マイクロフォンが内蔵されている。カメラには物理的なシャッターが用意されており、いざというときにすぐに映像をカットできる他、未使用時も安心感がある。●バックライト付きキーボードを標準装備 キーボードは白色のバックライトが光るタイプで、実測でキーピッチは約18mm、キーストロークも約1mmを確保する。ファンクションキーは、デフォルトでは音量の上げ下げやバックライトの明るさを変更できるキーに割り当てられており、F1〜F12のキーはFnキーと合わせて使う。デフォルトをF1〜F12にしたい場合は、Fn+Escで設定できる。 上下の矢印キーが天地で半分の大きさになっているので多少使いづらいが、メインとなるキーは大きく、スペースキーもそれなりのサイズがあるのでタイピングしやすい。 キーボード右上には電源ボタンと指紋認証センサーを兼ねたボタンが用意されており、Windows Helloによるログオンが可能だ。 続いて、ベンチマークテストで本製品のパフォーマンスをチェックする。●ベンチマークテストでその実力を知る では5410の実力について、ベンチマークテストを使って見ていこう。 比較するモバイルPCには、先日レビューしたONE-NETBOOK Technologyの「ONEXPLAYER mini」をピックアップした。こちらはゲーミングPCではあるが、採用CPUがCore i7-1195G7(以下、1195G7)だからだ。 1195G7は開発コード名「Tiger Lake(UP3)」の最上位モデルにあたり、5410に搭載されているCore i7-11390H(以下、11390H)は「Tiger Lake(H35)」に属するCPUとなる。この2つを比較したものが以下の表だ。 こうして比較してみるとよく似ていることが分かるだろう。コアとスレッドの数は同じだし、ターボ・ブースト利用時の最大周波数も同じだ。異なるのはコンフィグラブルTDP-up/down周波数とTDPのレンジだ。11390Hの方が周波数とTDPが高い。 ONEXPLAYER miniは液晶ディスプレイのサイズが7型と小型なため、発熱を抑えられる低消費電力の1195G7が選ばれているが、5410との差はどれくらいあるのだろうか。 テストの際には、5410の設定→システム→電源→電源モードで「高パフォーマンス」に設定して測定した。16GBのメモリ(LPDDR4X 4266MHz)と1TBのSSDを搭載したONEXPLAYER miniの画面解像度は1920×1200ピクセルで、TDPを28Wに設定した時の測定値を利用している。 まずは「CINEBENCH R23」だが、Single/MultiともにONEXPLAYER miniがリードしている。 続いて「PCMark 10」のグラフだが、スコアの傾向はCINEWBENCH R23と同じだが、総合スコアで3.7%程度に差が縮まっている。総じて、ONEXPLAYER miniの方が高クロックで動作しているのが分かる。 一方の「3DMark」になると、さらに差を広げられてはいるが、ONEXPLAYER miniのTDPを20Wにすると5410の方が上回っており、それほど目くじらを立てるほどでもない。ONEXPLAYER miniはゲーミングPCを銘打っているだけに、5410はビジネス向けモデルなのに随分と頑張っていると言えよう。 なお「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレベンチマーク」の結果だが、5410では全て「設定変更を推奨」だった。PCMark 10 Applicationsについては単独での結果を載せておく。 ストレージのSSDについては、SK hynix製の容量1TB(M.2 SSD/PCIe Gen 3 x4)が採用されており、普段使いでは十分なスコアが出ていた。 最後に、バッテリー駆動時間をチェックする。●バッテリーの持ちも及第点 続いては、バッテリーの駆動時間について見ていこう。「Battery report」で内蔵バッテリーの設計容量を確認すると約54Whだった。実際の所はどうなのだろうか。 PCMark 10の「Battery Profile」にある「Modern Office」で、オフィスアプリの利用を交えた駆動時間をテストをした。テスト時の条件は前述のベンチマークテストと同じく、高パフォーマンスに設定している。その結果は以下の通りだ。 3%のバッテリー残量で7時間57分という値をマークし、健闘を見せた。実際に外に持ち出して使ってみたのだが、日中の数時間程度であれば十分に使うことができた。出張などで持ち歩いて使う場合でも、1日のビジネス時間は十分にカバーできるだろう。●ビジネス/学習用モデルとしてコスパ優秀な1台 ここまでInspiron 5410についてチェックしてきたが、ゲーミングPCにはかなわないものの、ビジネス向けPCとしては高い性能を持っていることが分かった。バッテリーの駆動時間も十分にあり、外で仕事をしなければいけないときでも十分に対応できる。総合的に見て満足のいくスペックで買って良かったと思える1台だ。 原稿執筆時点の価格も10万円ちょっとと安く、求めやすいこともプラスポイントである。2月にAMDのAPU搭載モデルも発表されたが、第12世代Core搭載ノートPCの選択肢が増えるのはまだ先のことだし、登場当初は高値で推移することもある。 CPUの世代の新しさを求めるのでなければ、こういった既発製品を安く求めるのも1つの手だ。今なら、Microsoft Office Home & Businessと無線マウスがセットになった新生活応援・即納モデルが用意されており、Inspiron 5410はビジネス/学習用モデルとして実に手堅い選択肢であると言えよう。