13
12
ハミルトンからの追撃を振り切ったフェルスタッペン
F1第17戦アメリカGPで、ルイス・ハミルトン(メルセデス)の追走を振り切り勝利を飾ったマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)。ただ、レッドブルのチーム代表を務めるクリスチャン・ホーナーは、ふたりの差が1秒に詰まったレースの最終局面で彼らの前に周回遅れのミック・シューマッハー(ハース)が現れたことで、フェルスタッペンがハミルトンに抜かれるのではないかと恐れていたという。【F1動画】2021年F1第17戦アメリカGP決勝レースハイライト動画 周回遅れには後方から速いマシンが近づいていることを意味するブルーフラッグが振られ、進路を直ちに譲らなくてはならない。しかし、シューマッハーは複数のコーナーで走行ラインに留まった。これによりホーナーはDRS圏内でオーバーテイクし得る距離までハミルトンが近づいてしまうのではないかと心配したのだ。 ただ、フェルスタッペンは結果的に残り2周の最終コーナー手前でシューマッハーに進路を譲られただけでなく、彼の後方1秒圏内でDRS検知ゾーンを通ったため、最終ラップに入るホームストレートでDRSを作動させてハミルトンとのギャップをキープすることに成功した。 当時を振り返りホーナーはこう語った。「周回遅れまで戦略に組み込むのはとても難しいことだ」「ユウキ(角田裕毅/アルファタウリ・ホンダ)とミック・シューマッハーの後ろで多くのタイムを失った。最終セクター全体で彼(シューマッハー)がマックスの前に留まったから、勝利を失うことになるのではと考えた」「でも運良く、ホームストレートでDRSを使えたことで、ターン1でマックスは少し安堵できた。ただ、確実にピットウォールのスタッフに緊張が走った」 その背景には、レッドブルが採ったアグレッシブなレース戦略があった。 レッドブルはレーススタートでトップに立ったハミルトンに先んじてピットにフェルスタッペンを呼び込み、アンダーカットを実行。2度目のピットストップでも先に動いた。ハミルトンが第2スティントを引き伸ばしたことで、フェルスタッペンは8周フレッシュなタイヤを履くハミルトンにレース終盤で迫られた。 ホーナー曰く、レッドブルが1度目のピットストップタイミングを早め、アンダーカットを狙った理由は、フェルスタッペンがハミルトンの後方乱気流によってリヤタイヤを消耗してしまうことを懸念してのことだという。「ミディアムタイヤでは我々の方が速く、ルイスのリヤが滑っているとマックスは理解していた」とホーナーは説明する。「我々にはタイヤがオーバーヒートさせてしまう危険があったし、(ハミルトンの後ろで)詰まっていた。だからギャンブルをしてフリーエアの中で走らせることを選択した。それによってレース終盤でプレッシャーにさらされることになった」「メルセデスがスティントを伸ばすことは必然だったが、第1スティントの早い段階でチェコ(セルジオ・ペレス/レッドブル・ホンダ)をピットインさせたことで、彼らをピットストップせざるを得なくさせた」「ただ無論、彼らには第2スティントを引き伸ばす余裕があった。それで彼らは8周若いタイヤというレース終盤で有利なアドバンテージを得たんだ」「でも、デグラデーション(性能劣化)をマネジメントし、ルイスが迫る最終局面の残り5周に向けてリヤタイヤを十分に残していたという点では、マックスは素晴らしい働きをした。彼のパフォーマンスは驚異的だ」 アメリカGPでのパフォーマンスから、フェルスタッペンを“最高のドライバー”と評価するかと聞かれたホーナーはこう答えた。「それ以上だと思うね」「彼はレースを信じられないくらい上手にマネジメントしていた。見ての通り素晴らしいスタートではなかったが、勝利を奪うことはできた」「我々は攻めた戦略を採り、成功させた。ハイブリッド時代のF1でルイスとメルセデスが圧倒的に強さを発揮してきたサーキットで、大きな1勝を手にしたんだ」
Jonathan Noble