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多分こういうのが、本当の意味での万能マシン。
コロナ渦でごく当たり前のものとなった「集まるのは極力オンラインで」という感覚。それによって変容を余儀なくされたものは多々ありますが、アーティストライブはその最たるものかもしれません。
今、ライブをオンラインで行なう取り組みがさまざま進められていますが、その中で注目なのが「FAVER(フェイバー)」という新しいライブ配信プラットフォーム。最新テクノロジーやXRを積極的に研究開発し「Pokémon GO AR展望台」といった新しい空間的/立体的体験を多数生み出してきたデジタルクリエイター集団「THINK AND SENSE(シンク アンド センス)」が手がけています。リアルとバーチャルを横断する思考や感性を持つクリエイターが、ライブというリアルなイベントをデジタルコンテンツ化するのは、なんだかおもしろそうです。
さらに興味深いのが、「彼らの現場ではインテル® Evo™ プラットフォームに準拠する薄型軽量ノートPCがバリバリ活躍中らしい」というウワサ。インテル® Evo™ プラットフォーム一定のスペックを満たしたノートPCに与えられる称号で、砕いて言えば「デキるPC」の証。でも映像やARなどを駆使するクリエイターというとデスクトップPCやゲーミングPCの印象があります。スリムなノートPCがハイパワーを要求される世界でどう活用されているのか。
そこで今回はTHINK AND SENSEの製作現場を取材してきました。今どんなクリエイションを行なっているのか、また実際インテル® Evo™ プラットフォーム準拠の製品はどう活用されているのか。THINK AND SENSE部の部長である松山周平さんと、クリエイティブエンジニアの谷崎文香さんにお話を伺いました。
軽さのためにPCのスペックを諦める時代は、もう終わりつつあるみたい。
── まずは「THINK AND SENSE」について、教えて下さい。
松山さん:僕たち「THINK AND SENSE」は、株式会社ティーアンドエスのいち部署にあたります。もともと「なにか新しい技術を使おう」という漠然としたミッションからスタートし、今年で6年目を迎えました。
── 立ち上げ当初から「新しい技術」ありきだったのですね。
松山さん:はい。また、THINK AND SENSEにはクリエイティブディレクターやプランナーなどがおらず、デザイナーやエンジニア、あるいはダンサーなど、いわゆる手を動かして何かを作るメンバーだけで構成されています。
いろいろなことをやっていますが、たとえば今インタビューを受けているこのコワーキングスペースも「THINK AND SENSE」で手掛けました。「今の技術で空間を作ろうとしたらどうなるんだろう」というビジョンから入って、出来上がったのがここ「TUNNEL TOKYO」になります。
── 取材をしている今も何やら撮影が進められていますが、今日は何を作っているんでしょうか?
松山さん:あるプロジェクトの一環として、自分たちが言葉で言い合っていたことを、映像に落とし込んでみているところです。テーマは「現実世界と仮想世界の繋がり」、漠然としているかもしれませんが、そういった体験を僕たちなりの表現でいったん映像化しようとしています。ほかの企業の方とディスカッションする際に僕らの考えをレポートとして提出するのではなく、もう映像にしてバンと見てもらおう、というのがその目的です。
── クリエイティブって、言葉の打ち合わせだけだと、イメージの統一が難しいですもんね。
── 「dynabook V8/P」というインテル® Evo™ プラットフォーム準拠のノートPCを活用されているとうかがったのですが、どのような作業に使われているのでしょうか?
松山さん:僕は普段、最終的な制作は事務所のワークステーションで仕上げていて、そこに至るまでのプロトタイプ制作などにノートPCを使っています。「THINK AND SENSE」は、パワポを作るよりプロトタイプを作りましょう、なノリです。「わかるかたちにして提案する」をとても重要視していて、「dynabook V8/P」もプロトタイピングで活躍しています。
── 実際に、どんなツールを使っているのでしょう?
松山さん:「TouchDesigner」というビジュアルプログラミングツールを使っています。
── インテル® Evo™ プラットフォーム準拠のノートPCは第11世代インテル® Core™ プロセッサーを搭載し、内蔵グラフィックはインテル® Iris® Xᵉ グラフィックス。ハイスペックなのが共通の特徴になっていますが、THINK AND SENSEの仕事にも使えるほどの処理性能なんでしょうか?
松山さん:「dynabook V8/P」ならこんな風にTouchDesignerで作ったリアルタイムに生成されるビジュアルを壁一面のLEDで再生したりもできます。
谷崎さん:私が使っている3Dゲームエンジン「Unity」には、ビジュアルエフェクトグラフという大量のパーティクル(粒子)を扱う仕組みがあるのですが、それも軽快に動いたのは驚きました。
谷崎さん:これは4万個くらいパーティクルを出していますが、カクつくことなく描画できてます。処理性能に関しては文句なしです!
松山さん:13.3インチの大きさでこの性能であれば、もう大満足。使っていてストレスを感じることはないですね。GPU内蔵のノートPCはめちゃくちゃ大きなアダプターが必要になったりするので、そうした荷物や重さとのトレードも含めて満足いく性能でした。というか、とにかく軽くてびっくりしたんですよね。
── さきほどから片手で持ったりしていますよね。公称値は979gでしたね。
谷崎さん:2-in-1タイプでタブレットのような感覚でも扱えるのも良かったですね。キーボードをつけたタブレットよりも軽いですし。
松山さん:僕たちは提案や企画もよくさせてもらうのですが、なんせ実際に動く資料じゃないとわかりにくいので、相手方にディスプレイを向けられて、たくさんのGIFを埋め込んだ資料でも快適にスクロールできるのは助かります。13.3インチのサイズでタッチ操作ができるのは僕の中でも重要ですね。タブレットだと少し小さいかなと思うときもあるので。
ディスプレイの発色も非常にフラットでいいですね。Lightroomを使った写真の編集もコレ1台で完結できます。
松山さん:あと、外部データの読み込みも速いですよ。
── 高速で外部機器と接続できるThunderbolt™ 4ポートを搭載しているからですよね。どういったシーンでスピードを実感されましたか?
松山さん:ハイエンドな記録方式だと、10分の撮影データの容量が50GBとかいくこともあるんですよ。基本的には外部SSDに記録しているので、そのままPCで読み込んで作業することがよくあります。なので、大容量のデータでも臆せず読み込めるThunderbolt™ 4は心強かったです。外部接続特有の遅さを感じないんですよね。今までだといったんローカルにコピーしなきゃいけなかったけど、それが不要になりつつあるなと。
── いま新たにチャレンジしているという「FAVER」は、どのようなサービスなのでしょうか?
松山さん:一言でいうと、バーチャルライブ配信サービスです。コロナ禍によってバーチャルでの音楽配信サービスが一気に増えたと思うのですが、「FAVER」の持ち味は、アーティストさんが実現したいライブのビジョンを、プラットフォームの「FAVER」が支援して一緒に作り上げていく点にあります。
現実のライブの場合、ライブハウスがアーティストにハコ(会場)を貸しますよね。そこでどんなショウをやるかはアーティストさん次第です。この図式はライブハウスがバーチャルライブ配信プラットフォームに置き換わっても同じです。プラットフォーム側はあくまでもプラットフォームを提供しているだけです。
── あるアーティストが武道館でライブをしたいと思ったら、ライブの演出や構成を練るのはアーティスト側のスタッフの役割で、武道館は武道館という場所を貸すだけ。ネット配信にしてもそこは変わらないと。
松山さん:大物アーティストであればバーチャルライブにも予算を投入して大規模な演出を作ることができますが、やはりコストがかかる。そこを僕たちのクリエイティブでアーティストらしさを表現しつつ、コストを抑えたバーチャルライブが実現できればなと思っています。
── 自分なりのバーチャルライブをしたい時に場所を提供してくれるとともに、演出や使う技術を一緒に考えてくれるのが「FAVER」なのですね。
松山さん:そうですね。「FAVER」では音質や映像の解像感をウリにはしていません。これらはどれだけ機材にコストをかけたかの競争になってしまうからです。そうではない部分で新しい価値を生んで、アーティストにとって魅力になれば良いなと。
言ってしまえば、狙いはバーチャルライブの民主化ですね。バーチャルでは尖ったライブ演出なんかはプラットフォームとアーティストが一体になってこそできると思います。
── 話を機材に戻させてください。「dynabook V8/P」に搭載されているOSはWindowsですが、THINK AND SENSEにとってWindowsってどんな立ち位置なんでしょう?
松山さん:Windowsでしか動かないソフトがあったりするので、そこで必然的に必要になってきますね。
谷崎さん:デバイスの互換性の関係もあって、VRをやろうと思ったら今はWindows一択になるかも。
松山さん:Windowsの強みはガッツリ系の演算が必要な作業だと思います。Windowsが長らくやってきた分野ですし、僕らが重視しているリアルタイム性にも通じる部分でもあります。そうしたリアルタイム性を問われるもの、言ってしまえば重いクリエイティブですよね。Windowsならそこを任せられると思います。
── 最後に、「dynabook V8/P」は松山さんから見てどんなPCでしょう?
松山さん:一番びっくりしたのは軽さとスペックのバランスですね。僕はずっとゲーミングPCを使っていて、ハイパワーだけど重いのが当たり前でした。軽量でスペックを抑えたノートPCを使っていたころもありましたが、そうしたものは手放してしまいましたね。
── 軽いは軽いけどストレスが勝る、と。
松山さん:「dynabook V8/P」はそれがないことに驚いています。自分の要求に対してスペックと軽さが上回っていて、シンプルに完成度が高い。毎日持ち歩ける重さのPCとして、欠点がないのが一番の強みです。
正直、取材場所の「TUNNEL TOKYO」からしてとても面白い環境でしたし、この場所を作り上げた「THINK AND SENSE」のモットーが、新しい技術ありき・手を動かす人ありきなの、すごくカッコいいと思いました。クリエイティブに対するストイックさが垣間見える。
「dynabook V8/P」の性能も僕の想像以上でした。これほど軽いノートで3DCGソフトも動画編集も快適に動かせるなら、クリエイターにとっては一番そばに置いておきたいマシンってやつなのでは? で、そんなスペックならクリエイターでなくとも高機能なPCが欲しい人にはもちろんアリなのでは?
THINK AND SENSEの現場で使えちゃってるんだもんなぁ。
Source: Intel, dynabook, THINK AND SENSE, FAVER