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米国の動向から読み解くビジネス羅針盤
2019年5月20日、米グーグルがファーウェイへの一部ビジネスを停止したことが報じられた。トランプ政権は米国内の次世代通信規格5Gネットワーク建設で、中国の華為技術(ファーウェイ)の通信機器の採用を安保上の理由から認めず、欧州や日本などにも同社排除の圧力をかけている。「米中貿易戦争の一環」「中国の世界テクノロジー制覇の野望である中国製造2025をつぶすため」などの解説がなされているが、中国との5G競争において米国が同分野で何をしたいのか、何になりたいのかという「鮮明なビジョン」が一向に見えてこない。米中5G戦争の本質は、実は戦略の欠如による米国の迷走にあるのではないか――。
在米ジャーナリスト 岩田 太郎
在米ジャーナリスト 岩田 太郎
米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。
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たとえば、商業用の光ケーブルなどの通信基盤、ルーターなどの通信機器、アンテナや制御装置など基地局機器、データのストレージシステム、5G携帯端末向けのモデムチップ、コネクテッドカー向け5G通信モジュール、そしてこれらすべての連携に関わるソフトウェアなど、総合力で他国の競合を圧倒している。 特筆されるのは、これらの5G機器は戦略的に他社製品との互換性を欠くものが多いことだ。現行の4G世代の通信機器や基地局にファーウェイ製品を採用すれば、将来的には5G機器も自動的にファーウェイ製品を使うことになる。 さらに消費者向け商品においても、中国企業は5G携帯端末、5Gテレビなど周辺機器で世界に先駆けて、次々とイノベーティブな新製品を発表している。中国製品はシェアの面でも伸びており、米調査会社IDCによると、1~3月期の世界スマホ出荷台数で、首位の韓国サムスン電子や米アップルが落ち込む中、ファーウェイがメーカー別のシェアで2位になった。 こうした中、5月20日にはトランプ政権によるファーウェイ排除の意を受けた米グーグルがファーウェイの新規発売アンドロイド端末向けのライセンス契約を変更し、PlayストアのアプリやGmailアプリの利用ができなくなるようにすると報じられた。追い討ちをかけるように、ファーウェイにスマホ用の半導体など核心的な部品を供給する米クアルコム、米インテル、米ザイリコム、米ブロードコムがハードやソフトの供給を停止したと伝えられた。 加えて5月22日には、ソフトバンクグループの英半導体設計会社アームが米国の規制に従い、ファーウェイに対して米国を原産地とする技術が含まれる契約停止をしたと報じられた。 日本を含む海外で人気機種になりつつあったファーウェイのスマホは基幹部品の供給を絶たれ、さらにアンドロイド端末の最大の魅力であるPlayストアのアプリが使えないことで、消費者にとっての魅力も失い売上が落ち込むことが予想される。ファーウェイのスマホ部門の最大の危機である。 これに加えて、ファーウェイ製の5G基地局や通信機器に対する米テック企業の部品やソフトの供給も遮断され、日欧メーカーも追随を余儀なくされれば、ファーウェイの経営そのものが揺らぐ。 だがここで、アンドロイド後継としてグーグルが開発中のFuchsia(フューシア)OSをしのぐスマホOSをファーウェイが開発して世界に広め、Playストアのアプリ以上に魅力的な海外向けの中国製アプリを提供し、臥薪嘗胆と自力更生で5G基地局や通信機器の部品も自給自足できるようになれば、ファーウェイはピンチをチャンスに変えることができるかもしれない。 そうした「大逆転」が必ずしも夢物語として否定できないのは、中国が推進する「社会主義市場経済」の効率性と米国が信奉する「自由主義経済」の非効率性が、米中テック戦争の本質であり、米国がその非効率性と非合理性を対中禁輸や構造改革強制などの禁じ手でしか補えないという現実が存在するからだ。お勧め記事
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