Apple PayがWAON、nanacoに対応!おサ...

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Apple PayがWAON、nanacoに対応!おサイフ化が進むスマートフォンの未来

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は「WAON」「nanaco」に対応したApple PayやXiaomiの新製品について話し合っていきます。

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Apple Payで「WAON」「nanaco」が使える! 完成度が高まるアップルの決済サービス

房野氏:Apple PayにWAONとnanacoが対応しました。こちらについてどのように受け止められていますか?

房野氏

石野氏:逆にいえば、主要タッチ決済サービスで対応していないのが「楽天Edy」のみになりました。

石野氏

房野氏:アップルに採用してもらうためのルールなどはあるのでしょうか。

石川氏:アップルとしても、Apple Payの利便性を上げていく中で、積極的に対応サービスを増やしていきたいでしょうし、決済サービスを提供する会社としても、国内のスマートフォンユーザーの半分がiPhoneを使用していることを考えると、Apple Payに対応しないことにはなかなか利用してもらえません。

ただ、今まではQRコード決済を使う時に個別のアプリを開くので、その都度、顧客接点が作れていた。一方で、Apple Payを使う場合はアプリを起動することがないので、顧客接点が少なくなるという意味では痛い部分もあると思います。ここをどう改善していくかは、各社が知恵を出さないといけない部分ですね。

石川氏

房野氏:モバイルSuicaは頻繁にお知らせを送ってきますよね。

石野氏:正直Suicaにそれを期待していないというか、スムーズにお知らせを表示できるならいいんですけど、意外と時間がかかるんですよね。

房野氏:お知らせを詳しく読もうと思ったら、別のサイトに飛ばなければいけなかったりしますね。

石野氏:そうなんですよね。

法林氏:QR決済もそうなんだけど、難しいのは、楽天Payが通信エリア外だから使えないとか、アプリ主導だとどうしても面倒だよねという一面はある。じゃあFeliCaでかざすだけがいいのかとか、使い勝手については正直悩んでいる。

僕はメインでJCBのQUICPayを使っているんだけれど、急に使えなくなったことがあり理由を調べたら、JCBのQUICPayアプリが今年の春になくなって「Google Pay」内に収められたんですよ。こういった仕組みの変更とか、サービスの形が変わる時に、FeliCaとかGoogle Payがあまり告知できていないのがもったいないなと思う。

その点アップルはしっかりと告知しているし、カード会社としてもApple Payなら登録して使ってくれるだろうという算段が立ちます。あと、この前見つけたのは、Apple Payに登録しているQUICPayからiPhoneを購入すると5000円引きになる。こういう風に「Apple Payに登録して○○に使うと安くなります」みたいなことが結構あるので、アップルは偉いなと思います。

QUICPay

法林氏

石野氏:実はおサイフケータイアプリとかも、アップデートされて使いやすくなってきているんですけど、あまりアピールできていない気もしますね。

法林氏:そうだよね。もったいないなと思う。あと最近はカードのタッチ決済を使っている人を見る機会が増えたね。

房野氏:私もスーパーでの買い物とかだとカードのタッチ決済を利用していますね。

法林氏:WAONとnanacoの話に戻ると、Apple Payに対応したのはいいことだよ。

石川氏:WAONとnanacoの対応は同じ日にリリースされているんですけど、機能的にみるとWAONのほうが豊富になっていますね。WAONは「ご当地WAON」(買い物で利用すると、利用金額の一部をイオンが自治体などに寄付するWAONカード)なども登録できるのに対して、nanacoは1種類のデザインだけだったり、WAONはKDDIの「ウォッチナンバー」で子供がApple Watchを持っていれば、そこに送金するといった使い方もできます。しかもこれ、Cellular契約していなくても使えるようです。

法林氏:nanacoは「7pay(セブンペイ)」の不正アクセス問題をきっかけにサービスを廃止した記憶があるせいか、ちょっと運用が下手な印象がありますね。

石川氏:7payで失敗して、今はセブンアプリにPayPayが入っているんですよね。ただ、将来的には自社の決済サービスであるnanacoを普及させたいとは話していましたね。

石野氏:現状だと、nanacoはiPhoneの「Wallet」アプリから登録しようとすると、既存のカードを用意しないといけません。WAONはカードがなくても登録できて、要はモバイルSuicaみたいにその場で発行できる。使い勝手の違いが顕著に出ていますよね。

石川氏:あと、iOS 15になってから、「以前ご利用のカード」という項目が出て、OSアップデートのデータ移行が楽になりました。こういった作り込みもアップルはしっかりしているなと感じますね。

房野氏:Apple Payは機種変更した時、複雑な操作をしなくても以前の環境が利用できるイメージですよね。

法林氏:従来のスマートフォンから、データを削除し忘れていることもあるけどね(笑) とはいえ、Google Payにはユーザビリティを向上してほしいです。

実はApple Pay絡みで失敗したことがあった。iPhoneでオンラインのお買い物をして、ApplePay対応のサイトだったので、そのまま決済したけど、直前にApplePayのメインカードを試しにLINE Payにしていて、そのまま決済してしまった。普段、LINE Payは使わないので、ちょっとポイントを損したかも(笑)

Apple PayがWAON、nanacoに対応!おサイフ化が進むスマートフォンの未来

“ポイ活”がはかどる「Appleギフトカード」が登場!

房野氏:アップル関連でいうと、「Appleギフトカード」が日本で販売されましたね。

石川氏:iTunesカードと、お店で使えるAppleカードが統合された形です。10%ポイントアップといったキャンペーンを、キャリアを含めて様々なところでやっていたので、こつこつポイントを貯めていた人は安くアップル製品を買えますよね。

ポイント10%上乗せなどの施策でAppleカードを売ると、かなりの数がさばけるらしいので、モールなどが売り上げを稼ぐためにやるでしょうね。

法林氏:せっかくスマートフォンで決済できる時代になっているので、ここはうまく使ったほうがいいよね。キャリアとかサービスプロバイダーがお金を出しているわけですし、どんどん使うべきです。

石野氏:最終的には、Apple IDに紐づいた残高を、Apple Payで使えるようになると、さらに嬉しいですね。

房野氏:ギフトカードを使うとWalletに履歴が残るじゃないですか。あれをどんどん更新していけようになると面白いですよね。

石川氏:Walletでいうと、スマートフォンで荷物を発送する時、ヤマト運輸の送り状にあるQRコードがWalletに入るようになりましたね。

房野氏:どんどんスマートフォンがお財布化していきますね。

Xiaomiから超コスパハイエンドスマホ「Xiaomi 11T/11T Pro」が登場!

房野氏:Xiaomiからは、ハイエンドスマートフォンとなる「Xiaomi 11T/11T Pro」が登場しました。特に「Xiaomi 11T Pro」は6万9800円でSnapdragon 888搭載とコスパの高い製品になっています。

石野氏:7万円弱でSnapdragon 888搭載のスマートフォンを販売できるのはすごいですよね。

法林氏:あの価格設定は、凄いよね。

石野氏:衝撃的でした。しかも、おサイフケータイ機能も付いていますしね。比較するのもなんですが、バルミューダのスマートフォンよりも、ほぼすべてのスペックが上回っているのに、価格ははるかに安くなっています。

石川氏:価格の割にスペックのいいスマートフォンを販売できるのがXiaomiの強み。そうなると、他社はなかなか勝てないなと。反面、いまだに一般の人にはあまり知られていないメーカーではあるので、XiaomiはCMに“キムタク”の娘さんを起用したりと、普及に励んでいますね。

房野氏:Xiaomiが安くてハイスペックの製品をどんどん投入しているのに、いまいち知名度が上がらないイメージがあるのですが、どうなのでしょうか。

石川氏:僕たち業界の人間はXiaomiにいい印象を持っていますが、一般の人が買っているかといわれると微妙です。ただ単に価格だけ、スペックだけではなかなか受けないんだろうと思います。

房野氏:かつてのファーウェイのような立場に定着できないのはなぜなんでしょう。

石野氏:ファーウェイのイメージが大幅にアップした時は、タイミングが良かった。ユーザーが安いスマートフォンを探している中で、コストパフォーマンスに優れた端末を出せたからです。ドコモが取り扱ってくれたのもあります。そして、当時の端末としては圧倒的にカメラ性能が優れていたので、一気に広まりましたね。

石川氏:あと、ファーウェイは基地局の事業で儲かっているので、イベントも派手にできるし、プロモーションに回せる資金も潤沢でした。Xiaomiは儲かった分は開発に回すといっているので、派手さがないというか、プロモーションにそこまでお金をかけられない事情もあるかと思います。

法林氏:Xiaomiはもともと通販ブランドで、ネット広告に力を入れていた。アジア各国でも展開をしたけれど、やはりスマートフォンは競争が激しいので一時期陰りが見えました。

その打開策として、独自の販売店である「Miショップ」を、「無印良品」のようなイメージで各地に展開した。USBケーブルからカバン、自転車までなんでもそろえた結果、直販との相乗効果が出て、安定しました。そのおかげで売上が持ち直してきたという経緯があります。

房野氏:中国でスマートフォンを購入する場合、キャリアからとメーカーからだとどちらのルートが一般的なんでしょうか。

法林氏:メーカー経由ですね。日本でいう併売店みたいなものが全土にあります。そこでキャリアのSIMも購入できるので、スマートフォンとプリペイド方式のSIMを買う形が一般的じゃないですか。もちろん、キャリアショップやメーカーの店舗もありますけどね。中国は端末販売とSIMカードの契約が分離されているので、こういった形になります。

石川氏:Xiaomiはもともと通販サイトでの販売がメインなので、店舗にお金をかけずに、インターネット経由で端末を売っていく、そのスタンスで勢力を拡大したメーカーです。

法林氏:海外と日本では商売の根本的な形が違うというか、日本はオープン市場が盛り上がってきているといっても、まだ9割近くがキャリアショップからの購入です。

石野氏:日本でもオンラインでの販売数が伸びてきてはいるんですけれど、まだまだ少ないですね。

房野氏:Xiaomiのような安くて高スペックな製品であれば、オンラインでもっと販売台数が増えてもおかしくないと思うのですがどうでしょう。

法林氏:Xiaomiの販売ルートを見ればわかる通り、キャリアに卸している端末を除けばAmazonといったECサイトとか、家電量販店での販売比率が高いです。あと、Xiaomiは自前のオンラインショップとして、今年、日本向けにも「mi.comストア」をオープンしています。

Xiaomiが売上を伸ばすためには、どうしてもキャリアとの商売を増やしていかないといけない。2021年でいえばauとソフトバンクの両社から端末が販売できたのは良かったです。

房野氏:ドコモでの販売はできないのでしょうか。

法林氏:ドコモが取り扱わないというよりは、NTTグループ自体が中国の企業との取引をかなり制限されている。しばらくは難しいかもしれないですね。

......続く!

次回は、楽天モバイルについて会議する予定です。ご期待ください。

法林岳之(ほうりん・ たかゆき)Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

石川 温(いしかわ・つつむ)日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。

石野純也(いしの・じゅんや)慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。

房野麻子(ふさの・あさこ)出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。

構成/中馬幹弘文/佐藤文彦