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App Storeの決済手数料問題に揺れる米Apple(アップル)。同社は2021年8月から9月にかけ、そのApp Storeに関する新たな取り組みを発表した。中でも注目されているのは、あるジャンルのアプリにおいて、App Store以外の決済手段に関する情報提供や、課金が利用できるWebサイトへのリンクの設置を一部認めたことだ。課金に柔軟な姿勢を見せ始めたアップルの狙いはどこにあるのだろうか。
2020年に米Epic Games(エピックゲームズ)の人気ゲーム「フォートナイト」が独自の決済システムを導入したことでApp Storeなどから削除され、訴訟合戦に発展した。これを機として大きな注目を集めるようになったのが、App Storeの決済手数料に関する問題だ。アプリ内課金額の30%という手数料を見直す姿勢を長年見せなかったアップルに対し、エピックゲームズなどのアプリ開発者だけでなく、プラットフォーマーによる市場寡占を懸念する各国の政府なども大きな動きを見せるようになっていた。
そうした事態を受けてか、アップルは2020年12月より「App Store Small Business Program」を開始。アプリの売上額が100万ドル(約1億1000万円)以内の中小規模の開発者に対し、App Storeの手数料を30%から15%に引き下げた。さらに、2021年8月末から9月にかけて、アップルは手数料問題に関する新たな施策をいくつか打ち出している。
その1つは2021年8月26日、米国の開発者がアップルに対して起こしていた集団訴訟を解決するための策として、App Storeに関して7つの取り組みを進めるというものだ。その中にはApp Store Small Business Programを少なくとも3年間は継続することや、有料アプリの価格ポイントを100未満から500以上に増やし、より柔軟に価格を設定できるようにする措置などが含まれている。中でも最も注目を集めたのは、App Store以外の課金手段に言及したことだろう。
中小規模の開発者に向けた、App Storeの手数料を15%に引き下げるプログラム「App Store Small Business Program」。2021年8月26日の発表により、それが少なくとも3年間提供されるという(出所:アップル)[画像のクリックで拡大表示]App Storeで配信されるアプリには、App Storeが提供するアプリ内課金を利用するように義務付けられている。先のフォートナイトが削除されたのは、これに反してアプリ内に独自の課金手段を導入したためだ。だが実際のところ、「Spotify」「Netflix」「Kindle」など大手のコンテンツ配信サービスは、アプリ内課金による手数料を回避するため自社Webサイトで契約して課金した上で、App Storeで配信されているアプリを使ってコンテンツを見るという仕組みを取っている。
そうした課金手段をアップルがどこまで認めているのかはこれまであまり明確にされていなかったのだが、今回のアップルの発表では「Appleは、開発者がメールなどのコミュニケーションを使ってiOSアプリケーション以外の支払い方法に関する情報を共有できることも明確にしています」と述べている。アップルがアプリ外での課金手段を認め、それを顧客に伝えてもよいと明確に示したことは非常に大きな変化だといえる。
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