リモートワークの達人が解説!仕事が...

18
07

リモートワークの達人が解説!仕事が劇的にはかどるワークスペースの作り方

5年前から全社員がリモートワーク

2016年に、120坪・50席のオフィスから30坪・12席のオフィスへ移転した、CMS開発などをてがけるシックス・アパート(株)。

その時から約30人の全社員がリモートワークを始め、コロナ禍以前からその大半の出社頻度は月1、2回。コロナ禍以降は、オフィスをクローズしたため数か月出勤してない社員が大半だという。

会議など限定した機会で使うシックス・アパートの現在のオフィス

昨年は、多くの事務系ビジネスパーソンが、いきなりという感じでリモートワークに放り込まれたが、同社はそれよりずっと前から続けていた、いわばリモートワークの大ベテラン。慣れぬワークスタイルに悪戦苦闘するビジネスパーソンとは、そのノウハウとスキルには隔絶したものがありそうだ。

そこで、昨年11月に『リモートワーク大全』(ポプラ社)という書籍を出した、同社広報の壽かおりさんに、リモートワークをもっとスムーズに進めるための秘訣をうかがった。

だらだらと時間だけが過ぎていく問題はこう解決

リモートワークを開始した当初は、回線が遅いとか、オンラインツールの習得に時間がかかるといった、テクニカルな問題が主な悩みになる。

それを乗り越えて、ほっと落ち着いた先に直面するのが、「仕事のモチベーションが高まらない」「オン・オフの切り替えがうまくいかない」といったメンタル面での課題。

モチベーションをアップするためにYouTubeの猫動画を見る、オン・オフの切り替えのために散歩をするなど、自分なりの対策を講じても、結局はずるずると仕事への着手が遅れてしまって自己嫌悪。こんな「リモートワーク沼」にはまっている人は少なくない。

「これは!」という解決策はあるのだろうか?

壽さんは、こうアドバイスする。

「時間の使い方の自由度が高まるのは、リモートワークの良いところ。一方で、働く時間をすべて自分で決めなければいけないプレッシャーも増えます。

最も大事なのは、リモートワークの日のタイムスケジュールを決めてしまうことです。朝起きる時間、仕事開始までの準備、仕事の開始時間、業務中の休憩タイム、業務終了時間。決めてしまえば、それに従って動くだけです。スマホやスマートスピーカーのアラーム機能を活用して時報のように鳴らすのもよいでしょう。

過集中を防ぐために、業務時間中の適切な休憩も大事です。これも時間で区切って決めてしまいましょう。25分集中して作業したら、5分休憩する。これを4セットやったら少し長め(15~30分)の休憩時間を設ける。これを“ポモドーロテクニック”と言います。

また、オフィスにいたら働く背中で真面目に業務に取り組んでいることをアピールできたけれど、リモートワークではそうはいきません。代わりに、こまめなアップデートがリモートチームの一員としての真面目さです。取り組んでいるタスクを宣言してしまったら進捗報告のためにやるしかなくなりますよね」

短い休憩をとり過集中を防ぐのも大切

家族がいて集中できない場合は?

あるアンケート調査で、リモートワークの悩みの1位に上がったのが「家族がいて集中できない」。といっても終日その状態が続くわけでなく、1日の中で特定の時間(例えば子どもの登校前や掃除の時間)がそうなってしまう。

リモートワークの達人が解説!仕事が劇的にはかどるワークスペースの作り方

一時期もてはやされた「ノマドワーカー」のように、その間はパソコンやノートを持ってカフェに行くのが正解なのだろうか? 

壽さんは、次のように答えた。

「家族がいて集中しにくいのが短時間であれば、その時間は仕事の手を止めて家族との時間を過ごすのもひとつの方法です。私自身も、子どもが学校から帰ってきて習い事へ出かけるまでの1時間ほどは、子ども優先の時間にしています。

ただしそのタイミングに緊急の作業があって仕事の手を離せない、またはオンライン会議があることもあるでしょう。その場合、子どもは家族に任せて外で働くことになります。同様に、ケアが必要なシニアのご家族がいて仕事に支障がある場合にも、信頼できる方に任せて外で働くのが良いでしょう。

オフィスに出社するのもひとつの手ですが、それ以外にも自宅の近所でリモートワーカーが働ける場所は増えています。近所のカフェやコワーキングスペースはもちろん、最近ではホテルやカラオケの個室のテレワーク利用、駅構内の個室型ワークスペース、スーパー銭湯やコインランドリーでもワークスペースを併設している施設があります。

一人暮らしであっても、自宅の回線が不調などのトラブルが起きる可能性もありえます。会社のルールで、オフィスと自宅以外での勤務が可能なのであれば、必要な時にすぐ使えるよう近所で働ける場所をいくつか試しておくことをオススメします」

近所で仕事ができる場所も確保しておこう

理想のワークスペースのヒント

年末の大掃除が功を奏して、手狭で不便だったワークスペースが広くなった。これを機に、ワークスペースを大改造したいが、なにをどう改造していいのかわからない…

壽さんは、ワークスペースには唯一絶対の正解はないという。実際の話、シックス・アパートの社員たちの自宅ワークスペースを見ると十人十色。「個室に広いデスクがあったり、学習机を使っていたり、ダイニングテーブルや折りたたみテーブルを利用するなどさまざま」だという。

ただ、数年の間リモートワークを続けてきた彼らのワークスペースは、リモートワーク初心者には得るものが大きい。そこで、具体的な事例を紹介していただいた。

・個室でコックピットをイメージ

「経営企画担当社員のワークスペースは、自分専用の個室で、飛行機のコックピットをイメージしたスタイル。着席した自分を中心にした球体の内側に、情報が表示されているようにしたかったとのことで、画面がたくさんあります。正面のメインディスプレイは、ウルトラワイドの曲面ディスプレイ。サブディスプレイやiPadは自分を囲むように配置しています。

ノートPCのディスプレイは、Gmail、Slack、SNS などのコミュニケーション用途に。メインディスプレイとして利用するウルトラワイド曲面ディスプレイは、ほぼプログラミング用のエディタ専用画面。業務を自動処理するための Python のプログラミングコードから、仕事のアイデアのメモ書きまですべてエディタで書きます。ウィンドウを最大限まで広げて、全体像を描きながら細部を書き込みます。

サブディスプレイは主に表示用です。ウェブサイト、Excel や PowerPoint など。iPadは、Kindle本の閲覧、YouTubeやtorneアプリを使ってテレビ放送を再生しています。iPadなら書斎以外の部屋にも手軽に持ち運べて読書を継続できます。

机の横から伸びているスタンド(Sykollas フレキシブルアーム)にスマホをつなげることで楽な姿勢で操作も可能。参考書を開いておけるブックスタンドも必須だそうです。イスは、ゲーミングチェア(サンワサプライ オットマン付きゲーミングチェア)です」

・一人暮らしのワークスペース

「一人暮らしの事例として二人の社員を紹介します。上の写真は、マーケティング担当のワークスペース。一人暮らしの家だと、仕事専用スペースを設けるのが難しいこともあって、スペース節約のためにデスクはダイニングテーブルを兼用しています。

業務内容的にノートパソコン1台と紙の資料で済むため、兼用で事足ります。毎朝仕事を始めるときに道具を出してきて、仕事が終わる時間にはすべて片付けます。同居する家族がいなくても、出しっぱなしにしておかないのは、オン・オフの切り替えができるようにするためです」

次の写真は、一人暮らしのITチームのスタッフのワークスペースです。

画面付きのAlexa、自由に動かせるモニターアーム、こだわりのキーボード(US配列のApple Wireless KeyboardとMagic Trackpadを、BulletTrain Express Keyboard Platformにはめ込んで使いやすく固定)を配置した機能的なデスクです。業務上、デスクに複数のマシンを置いて同時に操作することもあるため、キーボードをどけたら広いスペースを作れるのがポイントです。イスは、高級ワークチェアのアーロンチェアです」

・子ども勉強机の隣にもうけたワークスペース

「こちらは、小学生の子どものいるワークスペースです。IKEAのMICKEというデスクを2つ並べ、片方は子どもの勉強机にしています。デスクトップパソコンとつながっているメインモニターは目線の高さに、ノートパソコンもスタンドで高くしてサブディスプレイにしています。手に取りやすい本棚には、よく使う辞書や参考書籍を並べています。イスにはあまりこだわりがなく、ニトリで買った4千円ほどのデスクチェアにクッションを敷いて使っています」

いかがだったろうか? リモートワークのベテランのアドバイスだけあって、幾つかの実践的な気づきとヒントが得られたことと思う。そして、より網羅的に知りたければ、壽さんの著書『リモートワーク大全』を一読されることをすすめたい。

壽かおりさん プロフィールノルウェーOpera社のマーコム、B2Bマーケ担当を経て、2010年シックス・アパート入社。約1400人のメディア運営者が集まるコミュニティ「オウンドメディア勉強会」を主催。複業としてライター・ブロガー活動、Vivaldi社のウェブブラウザの広報も行っている。2016年夏より、毎日リモートワークで働いている。「くらし☆解説」(NHK)、「Oha!4 NEWS LIVE」(日本テレビ)、朝日新聞、BuzzFeed Japanなどに出演やリモートワーク事例提供。『リモートワーク大全』は初の著書。本人のTwitterは@kaoritter

オフィス&ワークスペースの写真/シックス・アパート株式会社

文/鈴木拓也(フリーライター兼ボードゲーム制作者)