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そこで、「基本的な技術的要素に関しての標準化を終えた後で」、物理規格を複数に分割する事を提案している。
当初の目的では、これら全てを1つのPARでカバーする予定だったが、さすがにいろいろと無理がある規格の分割(IEEEの用語で言うならPARの分割)は、別に珍しい話ではない。過去に紹介した例では、IEEE P802.3ctから400GBASE-ZRがIEEE P802.3cwに分割したケース『「100GBASE-ZR」を残し「IEEE P802.3ct」から「400GBASE-ZR」を分割、「IEEE P802.3cw」で策定へ』がある。
このプレゼンテーションでは、実際にIEEE P802.3cn→IEEE P802.3cn+IEEE P802.3ct→IEEE P802.3cn+IEEE P802.3ct+IEEE P802.3cwと、3つの規格へ分割された例が紹介されている。
まずDWDMをP802.3cnから、次いで400Gb/sをP802.3cwから分離した格好になるこのPARの分割は、IEEE 802 Operations Manualに規定された正規の方法であり、スムーズに仕様策定作業を進めるには欠かせない手法の1つだ。
個人的な感想で言えば、まずレーンあたり100Gb/sと200Gb/sはPARを分割すべきだと思うし、200Gb/sについても仮にCoherentなりSHDなりを本当に規格化するのであれば、これも分割した方が仕様策定作業が迅速に進むように思える。
Nowell氏が同じように考えているかどうかは不明だが、実際に分割した場合のシナリオとして提案されているのが以下となる。
200Gに関しては、光ファイバーと銅(同軸)配線では変わる点が多いため、Coherentまで含めて3つ以上に分割される可能性もありそうだ普通に考えれば、レーンあたり100Gb/sは光ファイバーと銅配線のどちらも既に標準化作業が進行中の規格だから、単にこれを8レーン構成にすれば実現するわけで、技術的検討を要する項目はそう多くなく、比較的サクサクと作業が進みそうだ。
もう一方のレーンあたり200Gb/sは、技術的可能性は見えているとはいえ、製品レベルでの実現にはまだ足りていないことが多い。これはCoherent/SHDも同じで、製品レベルに持っていくために検討すべき項目は多そうだ。
ところが、これらを全て同じPARの下で検討をしようとした場合、作業時間が足りなくなる可能性がある。こうしたケースでは、PARを分割することで、作業時間を確保できることになる。
PARが承認されてからRevCom(Standards Review Committeeの審議)までは最長4年という制約があり、これを超えることはできない。PAR分割はこれに対する1つの解決案となる実際、IEEE P802.3ct(むしろ既にIEEE 802.3ctとして標準化が完了している)の場合、以下の表のようになっており、PARを分割したことで、それぞれの作業期限が後ろにずれている。
PAR承認 | 標準化予定日 | 標準化完了日 | |
IEEE P802.3cn | 2018年9月 | 2020年6月 | 2019年11月 |
IEEE P802.3ct | 2019年2月 | 2021年9月 | 2021年6月 |
IEEE P802.3cw | 2020年2月 | 2023年8月 | (現在作業中) |
だから、まず全ての規格で共通となる仕様に関して先行して作業を行い、これが終わった段階でPAR分割をすることで、手間がかかるもの(今回で言えば200Gb/s LaneやCoherent)を別のPARへと分割することで、共通仕様に関しては審議が終わり、手間のかかる部分に専念するかたちで仕様を検討できることになる。
その一方で、実現可能性が高い(今回で言えば100Gb/s Link)仕様に関しては、手間がかかる仕様の策定を待つことなく先に標準化が完了するわけで、これは都合の良い仕組みである。
こうしたことを踏まえて、IEEE P802.3dfは複数のPARに分割すべき、というのがこの提案である。
これはあくまで提案であり、まだPAR分割は決まった話ではないと念を押しているあたりは、やはりこの方針にさまざまな異論を持つ人がいるのかもしれないちなみに、この提案に対してもStraw PollやMotionは特に行われていない。このあたりは、最終的にDraft Project Documentへ反映されるかたちになるかと思う。