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オフィスワーカーの方なら、毎日手に触れるもののひとつ、キーボード。あなたは、会社や自宅でどんなキーボードをお使いですか? えっ、そんなの知らないって?
ちょっとちょっと、そんなことでは米GizmodoのSean Buckley記者が黙っていませんよ。彼はキーボードのマニアなんです。それも、ちょっとへんてこな。
***あなたが今使っているキーボードは、使いやすくて、快適で、十分に機能的なのでしょうね。しかしあえて言います。そんなものは退屈だと。世の中には、もっとへんてこで、珍妙で、ぜんぜん機能的じゃないキーボードがたくさんあるんです。
僕も、毎日論文を書いていた大学時代にはそんな世界を知りませんでした。しかしある日、キーボードの使いすぎによる手根管症候群で指が動かなくなりそうな自分を見かねて、父が変わったキーボードを持ってきたのです。その時からです、僕の「へんてこキーボード収集癖」がはじまったのは…。
父が、自分の手首対策に使っていたのがこれ。縦になってるキーボードSafeType keyboardです。これに出会いさえしなければ、僕の奇妙な収集癖もなかったのではないかと思うと、嬉しいような悲しいような。
ご覧のとおり、両端が折れ曲がっています。でかいです。鏡までついています。どうです、正気の沙汰じゃないでしょう?
基本的にはQWERTYキーボードですが、鏡を見てタイピングします。ブラインドタッチができる人には必要ないかもしれませんが。僕はこいつをほとんど毎日(ゲームに)使っていましたが、手首の痛みはなくなったんですよ。嘘みたいに。
まぁ正直に言えば、手首の痛みは関係ないですね。ただ楽しかっただけです。宇宙船を操縦してるような気分になれたし、この複雑な物体を扱っている自分が、なんだかスゴイ人間なんじゃないかって気分になったんです。同僚のみんな、横目でチラチラ見てたことも気づいてたよ。
手首のために使いはじめたはずが、いつの間にか、この奇妙なキーボードを使うことで注目を集めたい、って気持ちになってましたね。
ちょっとそこの方、笑いすぎです。確かに見た目は珍妙ですけど、これ素晴らしいんですよ。ウソです。全然ダメです。でもね、僕は愛してるんです。
AlphaGripのiGripは、見た目はゲームパッドのようですが、ぐるっと一周に渡ってキーがついています。後ろにだってあるんですから。第一印象は最悪でした。一時期、リビングで使うためのゲームパッドを探してたのですが、ひと目見て「最悪だ、絶対買うもんか」って思ってましたから。この独特のキー配列に慣れるための数ヶ月間、僕はこう信じ込もうとしていました。「これは先進的なキーボードなんだ。QWERTYという常識に対する、アンチテーゼなんだ!」って。
そう、数ヶ月かかったんです。このiGripが「変な形してる」って気づくのに。ぜんぜんアンチテーゼじゃない、ただ使いづらいだけだって気づくのに。不思議ですよね。
どんなに頑張っても、タイピングスピードは普通のキーボードの半分が限界でした。iGripには小さなトラックボールがついてましたが、普通にマウス使ってましたし。
何でこんなもの買ったのかって説明はできないんですけど、なんでしょう、チャレンジ精神をくすぐられたんですかね。このキー配列に。「不可能なことなんてない!」なんて妙な全能感に満たされてたんでしょうね。若かったんでしょうね。単に、SafeTypeよりヘンなのが欲しかっただけって話もありますが。ただ、普通のキーボードではスペースキーでしか使わない親指をいろいろと使えるのは、確かに楽しかったと認めざるを得ません。
今でもたまに、iGripのキー配列を思い出しちゃうのが悲しいんですよ。愛してるんでしょうね。やっぱり。
iGripは確かにとてもコンパクトでしたが、ある時考えたんです。本当の意味でのコンパクト、たとえばPCがなくても使えるポータブル・キーボードができないかって。そして、すぐに思いついたんです。テキスト打つしかできなくても、バッテリーがエンドレスのデジタルキーボードを。いろいろ試行錯誤しましたよ。古い電子リーダーとUSBキーボードをつなげたりしてね。何週間も挑戦したんですが、残念ながら失敗しました。
失意の中でふと気づいたんです。それ、もうあるじゃんって。それがこれ、AlphaSmart Neoです。
どうです? 今までのに比べて、すごく普通でしょ。でもこれ、ただのキーボードではありません。上部の小さな窓に、打ち込んだ文字が表示されるんです。ある意味、超コンパクトノートPCじゃないですか。さすがにワイヤレスではないし、機能もほんの気持ち程度(電卓とクイズ、それに辞書)ですが、それがなんだって言うんです?
言っときますけど、バッテリーの持ちハンパじゃないですよ? 連続使用可能時間、なんと700時間。2年以上同じバッテリーを使い続けても問題ない人もいたそうですから。何かステキなアイデアが閃いた時、メモを書き留めたい時のために、常に近くに置いておくのもいいんじゃないですかね。えっ? 書いたものはどうするかって? そうそう、こうするんです。
いつかこれだけ持って旅に出て、家と同じように記事を書くのが夢なんですよ。何にも邪魔されない、究極のキーボードとしてね。
こんな僕ですから、まぁ大抵のキーボードは見てきたと思っていました。しかし去年、TechCrunchのイベントで衝撃の出会いをしてしまったんです。それがこのチョウチョみたいな、Keyboard.ioです。まだ開発中ではありますが、僕が好きな多くの要素を含んでいます。親指に機能を集中したキー配列、ある程度まで縦型に駆動できること、そして、キーボードから手を離さずにマウスを扱える機能も搭載しています。下部のファンクションキーを押してホットキーを有効にすると、WASDの各キーで操作ができるようになるんです。
まぁ、とはいってもね。使ってみないことにはわかりませんから。そりゃ、発売されたら買いますよ。クラウドファンディングに登場したら、間違いなく投資しますよ。そんな自信、ありますよ。
そろそろ僕のコレクションも尽きてくる頃ですが、最後にDataHandをご紹介します。これは、宇宙ステーションのコントロールパネルです。
もちろん冗談ですが、この挑戦的なキー配列は驚嘆に値します。手や指の移動を極限まで削ることで作業効率向上を目指したこのキーボードは、その分あらゆるボタンが小さくなっているのです。各指ごとに5つのキーが詰まってるんですよ。まるでSF映画の小道具のようですが、ここまで来ると、もはや見た目には一体なんなのかわかりません。iGrip持ってるヤツが何言ってんの、って言われそうですが。
いかがでしたか。確かに、僕におかしなところがあるのは認めましょう。でもね、僕一人じゃないんです。GeekHackを見てみて下さい。そんな人ばっかりですよ。みんな真剣に、キーボードの配列だけを熱く語ってるんですから。そもそも、Keyboard.ioもここから生まれましたしね。
どうです? あなたもこっちの世界に来てみませんか? それとも、その使い勝手のいい、退屈なキーボードを使い続けます?
Sean Buckley - Gizmodo US[原文]