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6月26日、NHKだけ映らないテレビを自宅に設置した女性がNHKとの契約義務不存在確認を求めた裁判で、原告勝訴の判決が東京地裁で言い渡された。このテレビを製作したのは筆者である。
NHKだけ映らなくする原理は、LC共振型ノッチフィルタという古くから知られた技術で、最初はNHKだけ映らないアンテナの形で開発した。この装置を開発したきっかけは、NHK の要請で YouTube に上がった2013 年 3 月 8 日の中山成彬議員の国会質問が削除された事件である。
同日の衆議院予算委員会で、いわゆる従軍慰安婦問題について、辻元清美議員と中山成彬議員が正反対の立場から質問をした。いずれも YouTube にアップロードされたが、NHK は後者のみについて削除要請をした。これは、公共放送として守るべき政治的中立性を著しく欠くと同時に、国民の多様な意見を尊重する民主主義を脅かす行為である。これに対して、視聴者が合法的に抗議する選択肢を提供する必要があると考えて開発したのがNHKだけ映らないアンテナである。フィルタ部分は単体でAmazon等にて販売されており、既に3000本以上売れている。
冒頭で述べたNHK敗訴の判決の反響は大きく、既に各種メディアで判決の概要と筆者のコメントが報じられている。報道に対する反応はほとんどが好意的なものだが、もしこの判決が最高裁で確定してNHKだけ映らないテレビが普及すると、社会的弊害もあるのではないかと心配する人もいるだろう。そこで、本稿ではその観点でNHK問題を論じてみたいと思う。
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