高画質なだけじゃない。P40 Proのカ...

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高画質なだけじゃない。P40 Proのカメラは他社も学ぶべき点が多い(本田雅一)

ファーウェイのスマートフォンPシリーズは、"今年は何をしてくるのか"と期待したくなる端末だ。昨年は屈曲光学系の望遠カメラや独創的なRYYBセンサー、ToFセンサーなどを搭載。P40 Proはその構成を引き継いでいるが、使いやすさや画質、絵作りは大きく進化している。おそらく今回は「便利だけど画質はP20 Proの方が好みだった」という意見も出ないに違いない。また、今回は動画撮影時の画質も大きく向上、大幅な進化を見せている。

以前ならば、あざとい絵作りなど癖のあるカメラに眉をひそめるカメラ好きもいたかもしれないが、P40 Proに関して言えばひたすらに"よく練り込まれた"カメラだと感心している。それだけにGoogle Playを利用できないことが残念でならないが、今回はそうした部分を無視してカメラのみの評価に集中したい。

周到に選ばれた4つのカメラ

P40 Proのカメラを使い始めてすぐに気づいたのが、搭載された各カメラの絵作りが揃っていること。加えて質の面でも落差が少なく、カメラを切り替えての撮影があまり意識しなくても使える。当たり前のことだと思うかもしれないが、これがなかなかできていない複眼スマホは多い。例えばMi Note 10ではマクロカメラの絵作りや画質、Xperia 1 IIでは望遠カメラの最短合焦距離の長さなどで撮りにくさを感じた。実はP30 Proにも同様の差異を感じていたのだが、P40 Proには(もちろん違いはあるが)そうしたカメラ使い分けの意識がなくなった。

P40 Proは4眼と呼ばれるが、そのうちひとつはいわゆるToFセンサーで、被写体との距離と大まかな形状を検出するためのもの。これはP30 Proと同じだが、各カメラのポテンシャルは大きく進歩している。

メインカメラは35mm判換算で27mm相当の画角を持つ5000万画素のCMOSセンサー。一般的なベイヤー配列のRGGBではなく、独自のRYYBというカラーフィルタ構成も引き継いでいる。RYYB構成は透過率が高いため光の透過量が40%増え、実効感度が上がるのが利点だ。

一方、分光特性の面では不利と考えるのが妥当だろう。そこで、ファーウェイは4つの画素情報を用いて1画素を作り出している。P30 Proでは4000万画素から1000万画素を出力する設定が規定値となっていたが、P40 Proは5000万画素から1250万画素の映像を生成し、明暗/色相ともにノイズが少なく情報量も多く取り出せる。しかも単に高画素になっただけではなく、センサーそのものも1/1.7インチから1/1.28インチへと大型化。暗所での画質や解像感は、そのスペックから期待される以上の結果が得られている。さらにオートフォーカス時にも、複数画素の組み合わせを使うようになった。デュアルPD(位相差)AFだったものを、4画素分のセンサーを用いてオクタPD AFにしているという。

超広角カメラは18mm相当で、P30 Proの16mm相当よりも狭くなっているが、ここにも明確な意思が感じられる。4000万画素の3:2センサーを搭載し、動画撮影時はこちらのカメラがデフォルトで選ばれる。3:2時に18mm相当の画角だが、16:9の動画撮影時は(上下がカットされる関係で)やや狭くなる。しかし、この16:9での画角が動画撮影にはとても使いやすい。画素数もよく練られており、横幅はぴったりフルHDの4倍(7680)の画素を持つ。


 高画質なだけじゃない。P40 Proのカメラは他社も学ぶべき点が多い(本田雅一)

静止画撮影時と4K動画撮影時は4つの画素を加算して映像を作り出すが、フルHD動画撮影時は4x4画素で16画素の情報を用いて1画素を作り出すため、情報密度が極めて高い。ファーウェイは4Kではなく、フルHDでの撮影を推奨している。手振れ補正の効きもよく、手でホールドしつつ撮影しながら歩いても、さほどブレ感のない安定した映像を得ることができた。

最後に125mm相当の画角を持つ屈曲光学系の望遠カメラについて。P30 Proに対する改善の度合いという意味では、このカメラがもっとも顕著に良くなっているのではないだろうか。画素加算は行われない1200万画素(P30 Proでは800万画素だった)だが、実質的な画質は向上しており、さらに絵の質感がメインカメラに揃えられている。

125mmと長めのレンズだが、最短合焦距離が短く、歪曲が少なくワーキングディスタンスを十分に取った上でのテレマクロが撮影できる。もちろん、望遠カメラとしても活躍するだろうが、テレマクロの画質や使い勝手が良さは本機カメラの長所の一つとして挙げられるだろう。

作例では時計の文字盤を撮影したが、時計全体を捉えた映像、文字盤状のロゴをクローズアップしたところともに、チタンのケース、レーザーエッチングでチタン盤が立体加工された盤面の風合いが見事に捉えられている。なお、デジタルズームでは50倍まで拡大できるが、実用的な範囲は10倍ぐらいだろうか。電子補正と光学補正を組み合わせた手振れ補正機能は強力で、50倍時でも安定した撮影が行えた。

そして、これらのカメラの焦点距離の間が、スムースに繋がってくれる。もちろん、それぞれのカメラの本来の画角がベストな画質になるのだが、例えばメインカメラは4画素から1画素を作る。言い換えれば2倍まで拡大しても、実画素数は不足しないわけだ。

超広角から広角、広角から望遠へと、画質の違いを意識せずにつながっていくのは、ズーム時に複数カメラの映像を合成して1枚を作り出していることもあるのだろうが、やはり高画素センサーを用い、複数画素の情報を組み合わせて最終的な画像を出力するというコンセプトが、うまく機能しているからなのだと思う。

”ピント合わせ”を意識させない優れたAF制御

オートフォーカスに関しても、実によくできている。”オクタPD AF”であるかどうかが重要なのではなく、ユーザー体験として的確で素早いAFが行えていることこそが重要だ。

まずメインの広角カメラの撮影領域では、ToFセンサーが有効に機能する。大まかな距離が把握できているので、位相差を検出してピントを合わせる上で、多くの情報を参照できるからだ。ToFセンサーが捉えることのできる、おおよそ4〜5メートル範囲内の被写体は、その立体形状を把握した上でオクタPDによるピント合わせを行う。あらかじめ立体でシーンを取り込んでいるので、どの被写体にフォーカスすればいいのかを瞬時に判断できるのだ。

明確に対象となる被写体を認識しているときには、AFフレームがリアルタイムで表示されるので、ユーザーもP40 Proが被写体を捉えていることが画面上から読み取れる仕組み。これはToFセンサーの照射する赤外線ドットが届く範囲内だけの機能になるが、オクタPDはその範囲外でも効くため、使用中にオートフォーカスで戸惑うことはほとんどない。

ソニーのXperia 1 IIのオートフォーカスにも感心したが、本機には派手さこそはないものの、体験レベルとしてはそれを上回るものに仕上がっている。何より何らモードを切り替えることなく、カメラなりに使っていれば、そのポテンシャルを引き出せる点を評価したい。

カメラのつなぎ目を意識させない巧妙な作り

しばらく使って分かったのが、4つの画素を加算して1画素を作り出すことの意味だ。もちろん、こうすることでS/N比が向上し、1画素あたりの質は高まるが、それだけのために標準5000万、広角4000万の高画素大型COMSセンサーを搭載しているわけではない。と、気づいたのだ。