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AMD CEOのLisa Su氏 (出所:AMD Webサイト)
一昨年、NVIDIAのCEOであるJensen Huangはソフトバンク・グループからのArmの買収計画を華々しく発表した。
買収総額400憶ドル(約4兆5500億円)の超大型買収の計画は業界をあっと言わせたが、その後は主要各国の独禁当局の承認待ちの状態であった。
携帯電話のCPUのほぼすべてに使用されているArmコアのNVIDIAによる買収については、Armコアの既存大手ユーザーから反対が出ていて、FTC(米連邦取引委員会)も「次世代技術のイノベーションが阻害される」、という理由でこの買収を阻止するための提訴を行った。
こうした背景の中、米国の証券アナリストの間で「NVIDIAがArmの買収を断念」との観測が広がり、NVIDIAの株価は下がり続けている。NVIDIA側からは「買収計画を鋭意進めている」とのコメントであるが、この買収には暗雲が漂い始めている。
NVIDIAは昨年、Armコアを使用した汎用サーバーCPU「GRACE」を発表したが、これはあくまでArmからのライセンスでのコア使用である。当局の承認が得られなければ買収計画は白紙にされ、NVIDIAにとっては大きな痛手である。SBGがArmをIPO((新規株式公開)させる計画も噂されている。
いずれも両社による正式発表はないが、今後の動きを予見させるニュースである。
最近、見出しに関する小さい記事が出た。今となっては、この記事の背景を理解する人はかなり少ないであろう。というのも、EU司法栽によるこの判決は、EU当局がIntelに課した制裁金についての再審理の結果であり、そもそも事の発端は2009年に遡る。
10年以上前の事案であるが、当時はIntelの他社を寄せ付けない独占的な地位と、1400億円にも上る制裁金の大きさで、業界からは大いに注目されたニュースであった。欧州委員会のEU競争法(独占禁止法)は伝統的に企業による市場独占については厳しい目を向ける。IntelのほかにもMicrosoftやGoogleといった巨大企業にも巨額の制裁金を科した事でも知られる。
さて、最近報道されたIntelに対する制裁が無効となった判決の背景であるが、当時はIntelを相手取ってAMDが日本と米国で起こした損害賠償訴訟も並行して起こっていて、私も直接関わっていたので事情はよく理解している。簡単ないきさつは以下の通りである。
と、まあかなり込み入った話であるが、私は日本での事案について直接かかわった経験があるので“ひと昔前の事件”となってしまったこの件の最近の記事が目に留まったというわけである。
私がAMDで経験したこの辺の事情については、別の連載シリーズで詳細にわたり書いたのでご興味のある方はそちらをご参照願いたい
参考:巨人Intelに挑め! – 最終章:インテルとの法廷闘争、その裏側(1) 序章:2014年の奇妙な記事
独禁当局が独占企業に対し目を光らせる根拠は「特定企業による市場独占によって阻害されるイノベーションの停滞、市場価格の操作によってもたらされる消費者への不利益」であるが、今回の判決は今後のEU市場における当局の競争政策に少なからず影響を与えるものと考えられる。